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GEでショートショートでお題1「生死」01‐10

2013.04.26.Fri.16:27
お題「生死」30個挑戦中。10話までアップ。
ネタバレありまくり&捏造しまくり注意。

ばっちこいな方は追記からどうぞ。


30titles 生死 01-10


01 生


「私は今まで、あの男のご機嫌取りのために生きていた。そしてそれが私のすべてだった。」

明後日の方向を見つめてカートがそのような物言いをするのは別段珍しいことではなかったから、私はただ黙ってその話を聞いていた。

「そうして全てを失った今、私には最初から何もなかったのだということに気がついた。」
「私はミュエルトスにはならない。生き残るためにこのロストルドスから解放される道を探す。」
「今の私にはお前がいる。だから私は生きることが出来る。私は一度失ったこの魂を取り戻したのだ。」

カートはそう言って、血に染まったレイピアを掲げた。

「来たれ、聖戦のときよ!」

私はどちらかというとデカダンを好む人間だったから、彼の言っていることの意味を理解する気も起きなかったけれど、彼の歩む道ならば、たとえそれが修羅の道だとても共に歩みたいと思った。






02 死


あれからどれくらいの時が過ぎたのだろうか。
永遠の闇。過ぎることのない時間。未来永劫出ることの叶わぬ部屋。
最初は、思い出話なんかもしていたし、まぐあい合うこともしていた二人だったが、今ではもう語らい合うこともなくなった。
永遠。それは、途方もなく長い時間なのだと思っていた。でもそれは違った。時間がないというのは、「今」というものの連続を意味するのだということを知った。
せめて、二人の時間すらも止まってしまえばいいのに。そうすれば、この果てしなく続く「今」を感じることもなくなるはずだ。
しかし、私たちは呼吸をする。永劫に呼吸をし続ける。心臓の音が止まることもなく、体が汚れることもなく、空腹を感じることもなく、疲労を感じることすらもない。

「死にたいか。」

耳鳴りがやまない静寂を切り裂くように、ファレルが突然、そう言った。
背中に感じる温もり。握り締めた手の感触。やむことのない呼吸の音。ファレルが生きているという証。

「まさか。」

私は答えて、ファレルに口付けた。

「あなたと共にここに在り続けることを私は願う。」

ファレルは笑った。少しだけ嬉しそうに。

「お前ならそう言うと思ったぜ。悪かったな、カマかけて。」
「…ほんと言うと、ここでは、死ぬことすら出来ねぇんだよ。」
「俺は、もう、永遠に孤独になることはないってことだ。お前にとって胸クソ悪ィ話だろうがな。」

ファレルは少し寂しそうに、少し嬉しそうに、そう言った。
私はそれに答えるように笑ってみせた。もっとも、その笑顔がファレルに見えるはずがないのだけれど。

握り締めた手の感触。
これが私たちの、死の証。






03 死者と話す


「教授、頼まれていた資料が届いたのですが。」
「ああ、そのへんの床にでも置いといてくれるかい?机の上はもう置き場がなくなちゃってさ…はは、困ったもんだ。」
「お掃除手伝いましょうか?」
「ああ、いや、結構だよ。ゴミ山のなかに大事な資料とかが入っていたら大変だからね。君には区別がつかないだろう?」
「それなら教授が片付けてくださいよ。」
「悪かった悪かった、そのうち片付けるからさ。」
「そんなこと言って、どうせ片付ける気なんかこれっぽっちもないくせに…。」

生徒はずいぶんと長いことぶつくさと文句を垂れていたけれど、本を読み始めた私にとって、それは街中の喧騒のように耳に入ってこないものとなった。

「ふむふむ、なるほどねぇ。こんな説もあるのか…。」

今流行りの考古学、その専門教授である私、ラルフは、こんなふうに毎日本を読み散らかしては教授室に本の山をつくるのが本職のようになっていた。
何せ出来たばかりの学問なのであるから、誰よりもいち早く新説を発見し、学会で(権力にしがみついてるだけの)狸親父たちの鼻を明かしてやりたいと奮闘していた。
もっとも、今となっては、そんな頃もあったなという話なのだけれど。

今では、考古学そのものに熱意を注いでいる私がいた。
戻らない文化、戻らない言語、戻らない建築物、戻らない景色。すべてが過去の遺産。
そして何より、今では既に過去の遺産となってしまった、戻らない人々…。そして彼らが生きていたであろうころに書いた古い歴史書。

「生きることが嫌になったと書いた人よ。あなたは今どう思っているのですか。」
「死を忘れるなと説いた人よ。死の淵であなたが見たものは一体なんだったのか。」

視線を感じて振り向くと、生徒があんぐりと口を開けてこちらを見ていたから、私は手に持っていた本で顔を隠し、居眠りを決め込むことにした。

あなたにとって生きるとはなんだったのか、死とは一体なんだったのか。

当然返答のあるはずもない疑問が、次々と浮かび上がってくるのを必死で頭のすみに追いやって、私は本当に居眠りを始めた。
そのとき、ふと誰かが耳元で囁きかけてきた気がしたけれど、きっと生徒が何か言ったのだろうとさして気にも留めず、私は深い眠りの中へと導かれていった。






04 生存者


私は、生まれつき、人の心の声が聞こえた。
もう顔を思い出すこともできないが、幼い頃には両親もいたと思う。
でも私は、気づいたらそこにいた。誰かにむりやり連れてこられたのか、自ら望んでやって来たのかももはや分からない。
そこは死者の大地とよばれ、生きながらに死んだ人間たちが集まる場所だった。

私は、生まれつき、人の心の声が聞こえた。
こだまする、生きながら死んでいる者たちの悲鳴、悲鳴、悲鳴。
そのなかには幼い子供の姿もあった。
目玉のない、黒く窪んだ眼窩の子供が叫ぶ。

どうして私はここにいるの?どうして私はここにいるの?

子供のころ、私は気が狂うかと思うほど長い時間をそこで過ごした。でも、そこにいたのはたった2年だったとあとで聞かされた。
私をそこから連れ出した初老の男が嬉しそうに拍手する。

「おめでとう、今日から君は立派な呪術師(ウィザード)だ。」

私は、生まれつき人の心の声が聞こえた。人の心を操るのが呪術師である。私には生まれつき呪術師になる素質が備わっていたということだった。
人を呪わば穴二つという。呪術師とは、人の心の声をきき、操ることができるがゆえに、過ちを犯さぬよう子供のころから教育されるのだそうだ。

ならば、と私は思った。
なぜ私は今ここでこうして生きているのだろう。
きっとあの子供も私と同じようにあそこに連れて行かれたのに違いないのに。






05 生が夢で、死が現


私はいつも「私でないもの」の姿を眺めている。

私は、かつてはモントロと呼ばれていた。しかし、もう誰も私のことをモントロとは呼ばない。いや、正確には、皆、「私でないもの」をモントロと呼ぶのだ。
かつて、私は不老不死の夢を見ていた。そしてさまざまな人体実験を繰り返した結果、不老不死の身体を手に入れる術を発見するに至ったのである。
私は狂喜乱舞した。そして、自分自身の身に術を施したのだ。私は若かりし頃の姿を手に入れ、永遠に滅びることのない人間となった。

そうして、私は「私でないもの」となった。

私はいつも「私でないもの」の姿を眺めている。
「私でないもの」は、私の精神を使い、若かりし頃の私の姿で、私の思っていたとおりの行動をとる。しかしそれは「私でないもの」なのだ。
私にはもう死ぬ術すらも残されていない。
もうずっと長い間、私はただ、「私でないもの」を眺め続けている。眠ることもできず、生きることも、死ぬことも出来ないまま、ただずっと、永遠に。






06 死は遅かれ早かれ、さ


ヴァイロン北の外れ。私はいつも朽ち果てた城門がそびえ立つその場所へ行く。大事に、大事に、胸に抱えるは、あなたが生前こよなく愛した黒い花。あなたが私によく似ていると言って、愛でた花。
あなたと過ごした日々の数だけ、花を置く。あなたの墓標の前に、毎日、毎日、一輪ずつ。
幸せだったあの頃、あなたはよく言っていた。「私には夢がある」と。私はその夢を共に支えたいと切に願い、毎日を過ごしていた。
とても幸せだった。
あの日々をなぞりながら、私は今、尚、生き続けている。
あなたを失った今、こんなつまらない石ころのようなものを集めて一体何になるというのだろう。そう自分に問いかけてみる。それでも、あなたが人生をかけて追い求めた夢ならば、私はその夢を支え続けたいと思う。
一体なんのために。
いつか、この花が、あなたと過ごした日々の数だけ集まったならば、私は必ず神人の心臓を手に入れよう。あなたの無念を晴らすため。

「死は遅かれ早かれ、さ。」
あの頃のように、私があなたの隣で微笑む日は、またいつか、必ず、訪れるはずだから。

踵を返してふと思う。
なぜあの女は自らの心臓を差し出すと言えるのだろう。
一体なんのために、一体なんの目的で。
そこまで考えて、私は笑った。そんな分かり切ったこと尋ねたところで、きっとあの女もこう言うのだろう。

「死は遅かれ早かれ、さ」と。






07 一気に死んでしまった


ぼんやりと抱えた膝を見つめる。ゆらゆらと揺れる。ああ、そうか今私は船に乗っているのだと思いだす。船が大きく揺れた。たまに空腹が訪れては通り過ぎていった。そういえば身体中がずきずきと痛んだ。怪我をしているのだったような気もする。自分がどうしてここにいるのかもよく分からなかった。覚えていることはただ走っていたことだけだった。ひたすら走った。ただ走り続けて気づけばここにいた。頬を温かいものが濡らしている。胸が熱くて熱くて吐いてしまいそうだった。伸ばされた手を掴むことができなかった。私の足首を掴んだ手がだんだんと冷たくなっていく感触が今もまだ残っていた。

誰も、助けられなかった。

助けられなかったんだ。助けられなかったんだ。助けなかったんじゃない。助けたかったんだ。兄を、友を、みんな、みんな、助けようと思ったんだ。本当に、本当に。
嗚咽がもれだすのを止められなかった。何も見たくなくて目をぎゅっと閉じた。耳を力いっぱいふさいだ。助けたかったんだ。見捨てたんじゃ、見捨てたんじゃないんだ。

「―――ッ!!」

咽ぶ。声を張り上げたい衝動にかられても、わずかに残った理性が、ここは敵国側の船だから声を出してはいけないと、私を塞き止めるのが、狂おしいほどみじめだった。



あれから数年が経って、私は私が生き残った理由を使命だと感じるようになり、憑りつかれたようにジャケン収容所に隠された秘密を暴いた。そのなかで同じく生き残ることを選んだグレイスという女と出逢った。
セルバを追いかけ守り続けることで失った何かを取り戻そうとした。
それからまた時が経ち、今は、同じように生き残ることを選んだレイヴンさんとこうして共に笑い合っている。
先の見えない暗闇のなかで、真っ白になって、そして私は立ち上がり、これから歩む道を彩っていく。
あのとき感じた痛みも、苦しみも、すべてを失くした虚無感も、ひとつひとつ、ひとりひとり、手を取り合った思い出に塗り替えられいく。

そうして、今、失った記憶を取り戻すために、懸命に生きている兄さんを見守っている私がここにいる。

「どうしたのガルシア、ひとりで笑って。気持ち悪いよ?」

訝しげに私を見つめるセルバに、なんでもないよ、と言って、私はふたたび祖国の地を踏みしめた。






08 死ぬのが怖い


今日も私はオーシュの町を訪れては、ぼうっとこの街並みを眺めている。
あの頃の私には怖いものなど何もなかった。戦いに勝利し、私を讃える声をきくことを誇らしく感じていた。
今はただ、死ぬのが怖い。
柄の悪い、いかにも厳ついごろつき風の男が私の傍をすり抜けて行った。より強さを求めて、行きつく先は、あの子のところ。

「ああっ!俺のストラタデビルソードが消失したぁっ!」
「あっちゃー、またやっちゃったぁ…。えへへ、ごめんね。」

もう何度見たか分からない光景。
また来てしまった。あの子が私のことを分かるはずもないのに。
私とはなんの関係もない子供なのに。生まれたばかりの私に、あんなに大きな娘がいるはずがないのに。

私は今も戦い続けている。今の私にはそれしかないから。
ただ、今は、死ぬのが怖い。あの子のために。いったい、なんのために?

「…誰か、教えて。」

私のつぶやきは人々の喧騒のなかへと消えていった。






09 宣告された死


私に肉親と呼べる者はいない。人生のなかでそれらしい者がいるとすれば、それはただひとり、貰い子がいるのみだった。
何もかもが出来すぎていて、なんとも気味の悪い子供だった。見目も麗しく、何事にも秀でていて、勉学も剣もなんでも器用にこなした。私は、あまりの気味の悪さに何度も息子を手にかけようと思ったが、それと知らずに息子は懸命にあるはずのない私の期待に応えようと何事にも真剣に取り組んでいた。そんな愚かな息子だった。
やがて私は息子を手にかける最高の機会を得た。戦争という殺戮の名目は、世間の目を欺くには十分すぎるほどであった。
何度も手にかけようと試みた。そのたびに息子は逃げ惑い、最後には、息子をロストルドスへと追いつめるに至った。
ロストルドスに住む人間は、生きていないのと同じこと。どんな人間でもいずれはミュエルトスとなり死者の大地を彷徨い続けるのだ。生きようともがけばもがくほど、死の恐怖のなかへと己の身を投じるのみ。
しかし私は、何度もその場所へ赴き、息子をこの手にかけることに必死になっている。
それはあの息子が、あの場所から逃げ出すのではないかという不安からである。愚かな息子であったから、運命を受けいれようともせず、生き延びるためにもがき続けているのに違いない。
だから私は、とどめをさすために、ロストルドスへと赴き、あの愚かな息子を手にかけようと思っている。あの息子が生きているあいだは、ずっと私はこの不安から逃れることはできないのだろうと、そう感じているからだ。






10 ずっと夢を見てきたんだ、生きている中で


本日、私の念願のリサイタルが行われました。
私の心の奏でる音色が人々と共鳴し、ハーモニーとなって世界に響く。ああ、なんて素晴らしい時間を私は過ごしたのでしょう!
こんなにも美しい感動を創造する私の才能はやはり素晴らしい。
そうだ、今日のこの日を祝して、また曲を創りましょう。
ラララ、私の指が自由に弦を弾いていく。
ああ!もうこんなに素晴らしい曲が出来上がってしまった!
この世のものとは思えないほど優雅な旋律。そうだ、妖精たちの住む国のように甘美な響きという意味で、ティル・ナ・ノーグと名付けましょう。
こんなに美しい曲を私ひとりだけが知っているなんて、なんて私は罪深いのでしょうか。はやく街中の皆さんにも聞かせてあげなければ。
私は、私の住む都へと急ぎ足で帰っていきました。
リサイタルの疲れもどこへやら、感動で胸がいっぱいになった私は、今日も私の店の前で歌い続けます。

「リオ、新しい曲をつくったの?今回の曲も良い感じだね。」
「気安く名前を呼ばないでください。あなたなんかにこの曲の美しさは到底理解がかなわないでしょう。」

私が顔をしかめると、ロルクは分かりやすいほどに肩を落としてしまいました。

そうです。ロルク・プルホレン。
私の夢はずっと変わらず、あなたを殺すことなんですから。

今日も私の音色は美しくオーシュの町に響いています。彼がここにいるかぎり、これからもずっと、響きつけるでしょう。この憎しみの音色は。







ようやっと10話。2話は別で書いたSSの続きものなのです。
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